触れたい、できない
「…綺麗な青色……」
思わず、つぶやいてしまった。
いつも前髪で隠れて見えなかった万屋の瞳。
それがまさか、こんなに綺麗な瞳をしてたなんて…
「…?」
万屋は私の言葉に、一瞬戸惑ったような表情をする。
でもすぐにハッとして、前髪で瞳を隠した。
「…………見ました?」
普段より低い声。
俯いたたま唸るように声を発する万屋に、私はビクッとした。
…これ、見なかったことにした方がいいのかな?
「…み……てないかな」
「いや明らかに見ましたよね」
「はい見ました。」
…負けた。
だって声が怖いんだもん…
「でもなんで隠すの?そんなに綺麗な瞳してるのに」
単純な疑問。
私がそんな綺麗な瞳を持ってたら、絶対自慢しちゃう。
なのに、万屋は隠してる。
…それが私にとって、とても不思議だった。
「………これが…綺麗……?」
私の言葉に、クシャッと前髪を掴み唇を噛む万屋。
…あ、れ…私なんか言っちゃいけないこと言った…?
「……全然、綺麗なんかじゃない」
そうつぶやいたかと思うと、万屋はすぐに立ち上がり教室に入って行ってしまった。