触れたい、できない



「_じゃ。」




万屋はしばらく経ってから迎えに来た黒い車に乗り、あっという間に帰っていった。




……帰っ…ちゃった……




確かに朝、今日は早く帰りたいって言ってたけど…



早退までするくらい大事な用事があったんだなぁ




「…なんか私、高校に入ってからいろいろやばいよね…」



もちろん、万屋のことで暴走したことも含まれてる。




でもそれより今は……




万屋を探している時にとっくになった、授業開始のチャイム。




その瞬間は全く気にしなかったけど…




_授業始まって2日でサボるって…相当な問題児だよね、私。




チラッと保健室の先生を見る。




そして、私は少し身を屈めた。




「わ、私お腹痛いのでしばらくここで休ませてもらっても_」




「叫ぶ元気があったんだから、大丈夫よ。授業に戻りなさい」




私の演技を一瞬で見抜き、ニコッと笑う先生。



…そう、甘くないですよね



「はーい…失礼しました。」



私は一礼して保健室を出て、教室へと向かう。



…まあ、ひと段落着くまで見守ってくれたんだから、先生は相当甘いんだけどね




_そして私は、今から教室に入る気まずさを想像しながら、短い前髪を整えた。


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