触れたい、できない
ジリ…ジリ……
そして、袖をまくりあげながらゆっくりと万屋に近づく。
「………」
それでも顔を伏せたまま、うごかない万屋。
ジリジリ……ジリ…っ
「かっ金光さん!ちょっと落ち着いて?」
私の様子に、先生も慌てて私を宥める。
でも私は先生を押しのけ、ズンっと万屋の下の床を踏みしめた。
_そして、すぅっと思い切り息を吸い
「ナイスハイタッチっ!ノリ分かってるじゃん!」
と、笑った。
_その瞬間、2人はあっけに取られたように口を開ける。
「さっ、先生!仕事についての説明、お願いします」
そして私は勢いのまま、グイグイと先生を教卓の方に引っ張った。
「え?ええ……では…まずアンケートの集計について…_」
動揺していた先生も、仕事の話に持ち込むと我に返ったように真剣に話し出した。
私はなるべく、さっきまでの出来事がなかったかとように振る舞う。
…大丈夫、大丈夫。
そして先生の説明をメモに書きとり、最後まで真剣に聞いた。
先生の話を聞き終えた私(と万屋)は、お礼を言い、教室を出る。
そして指定された教室へと足を運んだ。
_その間、万屋は固まったまま一言も話さなかった。