触れたい指先、触れられない心
階段を下り終えると、そこには一人の男性がいた。
スーツを着て、サングラスをかけていて……
どこからどう見ても味方とは言えない人。
「霞さん……ここを通すなと言われています。すみませんがお戻りください」
「聞かぬと言ったら?」
「力ずくでも……通しませんよ」
そう言ってサングラスの男は拳を構えた。
ただ事ではない空気に呆気にとられることしかできない。
なんでここまでして霞さんとわたしは監禁されてるの……
ただ結婚すればいいって話じゃないの……?
「逃げましょう?! 霞さん……!」
「隠れていろ! ……くっ! ひっぱるな……」
霞さんの袖を引っ張ってこの場から逃げようとするも、霞さんはそれを拒む。
どうしてこんな事に、こんな暴力沙汰に……
サングラスの男も簡単には引かないようで、霞さんめがけて拳を振り上げた。
どうしよう、わたしが引っ張ったせいで……霞さん気付いていない……!
もうこうなったらわたしが……!
「危ない……!」
ドスッ!
鈍い音と共に、頬に激痛が走った。
サングラス男の拳を見事受け止めたみたい。