触れたい指先、触れられない心



「さっき、霞さんがあの人に”殺す”って言った瞬間、わたしに言ったわけじゃないのに、すごく背筋がピリピリしました」




「詩音は俺が怖いのか?」


「いえ……優しい人だと思っています! わたしのせいでこんなことになったのに、ガラスを取り除いてくれたり、受け止めてくれたり……抱きしめて頭を撫でてくれたり。こんなに優しくしてもらったのは初めてなんです」




 ニコリと微笑むと、霞さんは不思議そうな顔をした。
 もしかして疑われてる……? 全部本当の事なのに……


「俺が優しい……だと?」
「はい、すごく優しくてあったかい人だと」



「そんな訳ない。俺は……」
「え……?」
「……俺に深く関わるな」


 霞さんはわたしを突き放すように呟いた。
 関わるなって……


 どうしてそんな事……


「そんなの、わたしが決めることです……!」



 わたしは初めて霞さんに反論した。



 だって、納得できない。

 こんなに優しくされて、胸が締め付けられるような気持ちを思い知らされて。
 この気持ちが何なのか分からないまま”関わるな”なんて……


 そんなの納得できるわけない。



「……それなら、俺が突き放す」
「それでも絶対に見つけます……霞さんの事を」
「詩音、お前はここへ踏み入れるべきではない……俺の言う事を聞いてくれ」





 え……それってどういう……


「霞……」


 わたしの疑問は口に出す前に遮られてしまった。



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