触れたい指先、触れられない心

「お前……こんな騒がしいとこ行ってたのかよ」
「んね……失恋のショックでつい……」

 例のバーを前にして、マコはため息をついた。



「「あ……」」


 ふと声と視線が重なった。
 目の前にいたのは、わたしをこのバーに呼び込んだ褐色肌の男。


 この人なら、霞さんの事だけじゃなく、あの日何があったかも知ってるかも……!


「あのっ……この前わたしと一緒にいた人の事……教えてください……っ!」
「い、いや……ごめんけどそれは無理だよ」


 あからさまに目をそらす男性。
 何かやましいことがあるみたい……。


 でも、わたしだってここで引き下がるわけには……


「アタシら未成年なんだぜ? 情報をくれるってんなら、警察に行くのをやめてやる」


 マコはかなり強気な提案に出た。
 こんな強引な交渉、一体どこで覚えたんだろう。


「……わかったよ、付いてきてくれ」

 男はため息をつくと歩き出した。
 これは、交渉成立……ってこと?


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