触れたい指先、触れられない心

「そっか、これって好きって事なの?」
「は?! 気付いてなかったのかよ」
「うーん、元カレの事こんな風に思ったことなかったから……」

 元カレのこと好きだと思い込んでいたけど……
 違ったんだ……


 恋って、こんなに辛い物だったんだ。
 恋はドキドキとかキラキラしてて楽しい物だと……
 あ、でもそれも元カレにはなかったよなぁ。

「恋ってこんなに辛いものなの?」
「さぁ、恋したことないからわかんねー」
「そうなの?!」
「あぁ。めんどくさそうだし、ここでまったりしてる方が楽」

 む……まぁ確かに、こんなに辛いの、知らない方がいい感情だよね。
 でも、このままじゃ終わらせたくなくて、もっと知りたいって思う。

 めんどくさいけど、全然苦じゃなくて……
 なんていうか、霞さんの為ならなんだってできそう。

「ほら、この時間越したらもうあの人は来ねぇよ。帰るんだな」
「ちえー……。じゃあまた明日ね!」

 そしてわたしは渋々バーを出た。
< 26 / 84 >

この作品をシェア

pagetop