触れたい指先、触れられない心
「……この男は、過激な暴力団の若頭。人の事を何とも思っていないあのバケモノの子なんだよ……っ!」
サングラス男の衝撃的な言葉に、頭が真っ白になる。
霞さんが暴力団の若頭……?
「俺の父のせいで職を失ったのなら、それは俺のせいでもある。最後の情けだ、何も見なかったことにする。……この場から消えろ」
霞さんが冷たく言い放つと、サングラス男はこの場を飛び出して消えていった。
「霞さ「何故このような場所に来た」
わたしの言葉を遮り、霞さんはわたしを睨みつけた。
「俺は、無事でいてくれたらそれで良い。と言った。……なのに何故このような真似をする?」
霞さんの言葉に何も返せなくなる。
そうだ、約束を破ったのはわたしだ。言い返す言葉なんてあるわけない。
「あの時隠したことも、知らなくてよかったことも全て明かされてしまった。何も知らなければ、綺麗な思い出で済んだというのに……」
霞さんはそう言うと、わたしから離れようとする。
また、素直になれないまま、霞さんを手放してしまう。
そんなの、もう嫌だ……