触れたい指先、触れられない心
「そ、それってわたしと結婚してくれるという事ですか?!」
「……詩音が高校を卒業したら、だ」
えぇ……って事は、あと二年……?!
そんなぁ……
でも、その約束があるだけで幸せだよ。
「あの、わたしは今霞さんの彼女って事ですか?」
わたしは遅る遅る聞いてみた。
「彼女……とは?」
霞さんは悪びれることなく返す。
え……? だったら今のわたしは霞さんにとって何……?
「えっ、だって結婚予定ってことは、今は彼女じゃないんですか?!」
「恋愛の事はさっぱりで、彼女というものがどういう物なのかわからない」
あれ……これってわたしの考えがおかしいのかな? いや、でもわたしは霞さんの事好きだけど、霞さんはわたしの事好きかもわかんないし……
お互い好きじゃないと付き合ってる事にはならないか……いやいや、わたし元カレの事好きじゃなかったけど付き合ってたじゃん! なら……
ううん、違うよね。
お互い好きじゃないと意味ないんだ……
霞さんに好きだって思ってもらえるように頑張れば、彼女にしてもらえるのかな……?
「彼女っていうのは、結婚の前段階で恋人として付き合っている人の事です。霞さんのそういう存在になれるように……わたし、頑張ります!」
「そうか、恋人か……」
「霞さんが、今はわたしの事を好きじゃなかったとしても、わたしは霞さんが好きです! だから、いつか振り向かせて見せます!!」
そう伝え終えると、霞さんの口角が少しだけ上がるのが分かった。
「ああ、楽しみにしている」