触れたい指先、触れられない心
*Begonia*
▼ライバル出現?▼
「分かったから、何度も同じ話してんなよな!」
「だってー……聞いてほしいんだもん」
「あのなぁ、耳にタコができるほど聞かされてるぞ。やっと会えたからってテンション上がりすぎだ」
そういってわたしを睨むのは、親友のマコ。
嬉しくて霞さんとのことを語っていたら、どうやらうっとうしがられたみたい。
「そういや、もうすぐデートの時間なんだろ?」
「あっ!! そうだった……って、デートって言っていいのかな……?」
「……知らねーよ。でも、二人で過ごすんならデートだろ」
そっか……
って事は、わたし……霞さんとデートできるって事?
どうしよう、一度家に帰ろうかな……こんなただの制服で霞さんに会うなんてー……
「ねぇ、マコ。一旦家に帰って着替えた方が……」
「……詩音、残念ながらもう遅いみたいだぞ」
「え……? ――……あ」
マコの視線に目を向けると、霞さんがいた。
夕方の風に、霞さんの長い髪がサラリとなびいて、いつもより一層綺麗に見えた。
「あっ……待ちましたか?」
「いや、少し早めに着いてしまっただけだ。気にするな」
霞さんはそう返すと、こちらに歩いてきた。
「アタシは帰るからごゆっくりー」
「えっ、ちょっ……マコ?!?!」
マコは何かを察したみたいで、そそくさと帰っていった。
「……良かったのか?」
「は、はいっ! また明日も会えますので!!」
「ところで、一旦家に帰りたかったんだろ?」
「それは……せっかく霞さんと会うのに制服じゃ……釣り合わないかなって思って」
「そんなことは気にしなくて良い。詩音はそのままが良いと思うのだが……それでは足りぬか?」
霞さんにそんな満足すぎる言葉をもらえるなんて思ってもなく、わたしの顔は一気に温度を上げた。
「い、いえ……ありがとうございます」
周りから見て、わたしと霞さんはどう見えてるんだろう、恋人に見えてたらいいのにな……なーんて、こんな素敵な人と恋人になんて見えるわけないのに。
どうしたら霞さんとお似合いに見えるんだろう……。