触れたい指先、触れられない心
「もう会うこともないだろう。ハッキリと断っておいた」
「……良かったんですか?」
「あぁ、詩音を傷付ける事が、俺にとって一番辛いことだ」
霞さんは凛々しくてカッコよくて、素敵で大人で……
だけどわたしはワガママで嫉妬深くて子供で、絶対釣り合ってないって不安になる。
どうすれば霞さんのお似合いの婚約者になれるの……?
「……大丈夫か?」
「はい、十分すぎるほどです! 霞さん、ありがとうございます」
「いや……せっかくの二人の時間を台無しにしてしまってすまない。明日でよければまたここに来ないか……?」
霞さんからデートに誘ってもらえるなんて……
夢みたい……!
「……はいっ!!」
さっきまで流れていた涙も、すでに吹っ切れていて、わたしは満面の笑みで頷いた。
「明日も霞さんとデートできるなんて……明日が楽しみです!」
「デート……これがデートなのか……?」
「わたしは、そう思っています!」
「そう、か……デートか」
霞さんの表情は心なしか嬉しそうに見えた。