触れたい指先、触れられない心


「もう会うこともないだろう。ハッキリと断っておいた」
「……良かったんですか?」
「あぁ、詩音を傷付ける事が、俺にとって一番辛いことだ」



 霞さんは凛々しくてカッコよくて、素敵で大人で……
 だけどわたしはワガママで嫉妬深くて子供で、絶対釣り合ってないって不安になる。


 どうすれば霞さんのお似合いの婚約者になれるの……?



「……大丈夫か?」
「はい、十分すぎるほどです! 霞さん、ありがとうございます」
「いや……せっかくの二人の時間を台無しにしてしまってすまない。明日でよければまたここに来ないか……?」



 霞さんからデートに誘ってもらえるなんて……
 夢みたい……!


「……はいっ!!」


 さっきまで流れていた涙も、すでに吹っ切れていて、わたしは満面の笑みで頷いた。


「明日も霞さんとデートできるなんて……明日が楽しみです!」
「デート……これがデートなのか……?」
「わたしは、そう思っています!」
「そう、か……デートか」


 霞さんの表情は心なしか嬉しそうに見えた。
 
< 46 / 84 >

この作品をシェア

pagetop