触れたい指先、触れられない心


 ◆◇◆



 まずいことになった……
 霞さんが迎えに来てくれるまであと30分もないというのに、どうしてこんな事が……


 あろうことか、おそらく最悪のタイミングで奴が目の前に現れた。


 霞さんの元婚約者……サヤカ


 だけど大丈夫。
 サヤカは校門に寄りかかって誰かを待っている。多分わたしを待ってるんだろうけど……。
 わたしは教室の窓からその姿を窺っていた。


 大丈夫、このまま出ていかなきゃバレない。


「詩音、早く行かねーと。そろそろだろ?」
「まだ駄目、あの女が帰るまで……!」
「あの女って……アイツ一体誰なんだ?」


 マコはそう言ってサヤカの方に視線を向けた。

「あの女は……霞さんの元婚約者……多分わたしを待ち伏せしてるんだと思う。だからこのまま居留守戦法を使って……!!」



 自信満々なわたしを見て、マコは呆れたようにため息をついた。


「いや……ダメだろ。詩音はアイツを会わせたくもないんだろ? だったら早めにアイツを移動させないと、最悪霞って男とアイツが鉢合わせるぞ?」


 マコの思わぬ言葉に思考が停止する。
 

 あ……
 なんて重要なことを忘れてたんだろう。


 どうしよう、霞さんが迎えに来てくれるまであと25分……
 それまでにあの場から退場させないと……!


「マコ、行こう!!」
「おう! って……引っ張んなっ!」


 マコの服を引っ張って、わたしたちは校門へと向かった。
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