触れたい指先、触れられない心
*霞 Side*続き
「すまない、話し合いをするべきだったな……」
「……え?」
「それも詩音に気付かされた……。悲しませたら身を引くのではなく、笑顔にさせるにはどうしたら良いのかを考えることが大切なのだという事に」
詩音と出会わなかったらきっと思いもしなかっただろう。
悲しませたくないと不安になったり、ずっと笑っていてほしいと願ったのも詩音が初めてだった。
詩音の気持ちに応えてあげたい。
こんなに誰かの事を想ったのは初めてだ。それを無駄にしたくない。
「本当にすまないと思っている。だが、もう戻る気は本当に少しも無いんだ……分かってくれ」
俺は初めて人に頭を下げた。
”人に頭を下げることは負けを意味する、次期頭領で若頭なら人に頭など下げるな”そう教えられていたが、そんな事はどうでもよかった。
詩音との将来を守るためなら、そんなプライドなんて簡単に捨てられる。
「そっか……最後に一つ言わせて?」
「……何だ?」