触れたい指先、触れられない心
▼ドキドキの理由▼
◆◇◆
あの日から毎日毎日霞さんの事を考えていた。
だけど浮かれすぎてテスト期間に勉強をしていなかったわたしは、見事に三教科赤点を取り補習メンバーの仲間入りを果たしてしまった。
「どうしよう……来週から補習が始まっちゃう……そしたら一か月は霞さんと会えないかも……」
独り言をぶつぶつと喋りながら帰り道を一人で歩いていた。
「あれ、詩音じゃん」
後ろから呼びかけられて振り返ると、そこにはわたしの元カレと浮気相手・現彼女であろう女が手をつないで立っていた。
「あー……久しぶり?」
なんで声かけてきたの? 意味わかんない。そんなことを思いながらも、愛想笑いをした。
「久しぶりだって! 別に会いたくなかったんだけど」
女が笑いながらそう言うと、元カレも同じように笑い出す。
は? 何こいつ……
……でも、こんな人と付き合ってたなんて、自分がバカらしくなってきた。
たしかに、笑える……
そう思うと途端に笑いが込み上げてきて、わたしも同じように笑い出した。
「……は? 何こいつ……おい、何笑ってんだよ!」
「ふふ、いや……こんなのと付き合って、こんな女に浮気されて……そう思ったらバカバカしくて笑いが込み上げてきちゃった」
わたしがそう言い終えると、女は顔を真っ赤にしてわたしに詰め寄ってきた。
「は?! 何言ってんの? 捨てられた分際でさぁ」
「いや、そんな変な男喜んであげるよ」
だってこんな男……霞さんに比べたらアリにも満たない。
というか、比べることが失礼。
「お前なんて一生誰からも相手にされねーよ!!!」
女はわたしに向かって中指を立ててそう言った。
いくら相手にしまいと思っていてもこうされたら黙っていられない。
わたしが怒りに任せて口を開こうとした瞬間、背後から抱き寄せられた。