触れたい指先、触れられない心
「にしても、どうしてこんな廃墟にわたしたちは来てしまったんでしょう……」
「来たくて来た訳ではないが、理由は大体分かっている」
「それって……」
そう問いかけた瞬間、誰かの足音が聞こえてきた。
まさか、わたしをこんなとこに連れてきた犯人が来たんじゃ……
まぁ、それしかありえないだろうけど。
「……気を失っているふりをしておけ」
霞さんの真剣な表情に、わたしは頷いた。
多分それが最善なんだろう。霞さんは一体どうするつもりなのだろう。
カチカチッ……
ガチャッ……
鍵の開く音と共に、重い音を立ててドアが開く。
「また抜け出そうとしていたのか……霞」
しがれた老人の声が聞こえる。
この人は霞さんを知ってる……? 一体誰? もしかして助けに来てくれた……?
いや、でも……抜け出すって……この人がわたしと霞さんを?
考えれば考えるほど溢れてくる疑問。
「何故、このような事を……それに、何故この女を巻き込む」
「それはお前が一番分かっているはずじゃ。いつまで掟に背くつもりか」
わたしの前で繰り広げられる会話。まったく話の流れがわからない。