触れたい指先、触れられない心


「え?!?!?! あの、一体何を言っているか分かってるんですか?!」
「……失礼も承知の上だ」
「あの……どうしてそんなことを……?」


 今日の霞さんはなんだか変だ。
 どうして……いきなりキスしてほしいなんて言い出したの?

 霞さんとキスだなんてそんな……考えただけでめまいがしそう……


「詩音! 大丈夫か……? すまない、やはり聞かなかったことに……」
「だ、大丈夫でふ!! きっキスなんて初めて出会ったときに沢山しましたし!! 今更緊張なんてしないれすよぉ!!」


 ……ダメだ。
 意識しまいとあがいた努力も水の泡、声は裏返り噛み噛み。
 きっと動揺しすぎているのはバレているだろう。


「で、でも……! 霞さんとなら……どんな事でもできます。キスだって……」


 頭は真っ白、顔は真っ赤……もうどうしていいか分からない。
 あの時は意識が飛んでたからキスできたんだもん……ってか残念なことに一切記憶残ってないし……





「かたじけない……では、その……目を閉じてくれるか……?」




「はっ、はい!」


 霞さんの言う通り、強く目を閉じる。
 どうしよう、心臓がドキドキ……いや、バクバクとうるさく響く。
 それに、緊張で体が震える……


 こんなのやだ……こんなカッコ悪いわたし……


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