触れたい指先、触れられない心


 フッと霞さんが近寄ったような気がした。
 それだけで胸が跳ね上がって平常心じゃいられない。いますぐ逃げ出してしまいたいくらいだ……



 カタカタと震えるわたしの頬に、霞さんの手が優しく触れる。
 そっと当たる髪の毛の感触に、さらに鼓動は加速した。


「…………ッ!」




 霞さんのさらりとした肌がわたしの肌を掠めて、そのまま柔らかい何かが唇に重なるのを感じた。

 唇で感じた初めての感触……温かい体温が直に伝わってくる。
 鼻先にくすぐる霞さんの頬の柔らかさ……


 キスって……こんな、こんなに……っ



 そしてその柔らかい唇は、ゆっくりと離れていく。


「ん……、はぁ……ッ」


 恥ずかしさと息苦しさで、思わず吐息が漏れた。
 


 自分の意思とは裏腹に、涙が滲む。
 どうしよう、こんな恥ずかしいのはじめて……でも、全然嫌じゃなくて……

 霞さんの柔らかな唇の感触はまだしっかりと残っている。
 それが妙にリアルで名残惜しくなって指でなぞってみる。


「……霞さ……ん? ……っ?!」

 え……霞さんの顔、真っ赤……
 いつもあまり表情を変えない霞さんだけど、この時ばかりは違った。
 顔を真っ赤に染めて手で口元を覆い隠したまま俯いている。

 霞さんでもこんな表情したり、赤くなったりするんだ……


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