触れたい指先、触れられない心
「あの……」
わたしの手が霞さんに触れようとした瞬間、霞さんはハッと我に返ったように距離を取った。
「……! すまない、その……」
「い、いえ……というか、わたしは覚えてないけど、初対面の時に何度も……」
「……その時のものとは全然……いや、何でもない」
全然……なんだろう……?
霞さんが何を考えているのかわたしには全然わからない……
いつも大切な言葉の前で口をつぐんでしまう。
信用されていないのかな……?
「あの……わたしの事どう思っていますか……?」
無意識に出てしまった言葉、慌てて口元を手で塞いでみても、時すでに遅し。
霞さんはわたしの方を向きなおした。
どうしよう、こんな事聞くつもりなかったのに……
こんな時に……わたしのバカ。
「もしかしたら俺は……詩音と添い遂げるのは難しいかもしれない」
え……
予想もしていなかった衝撃の一言で、わたしの頭にガツンと殴られたような衝撃が走る。
どうしてそんなこと言うの……?
わたし何かした? キスの仕方変だった……?
それとも、霞さんの期待してたキスがわたしにはできなかった……?
そうだ、さっき霞さんが言いかけていた言葉……
”その時のものとは全然……”って……やっぱり霞さんを満足させられなかった……?