触れたい指先、触れられない心



「……これからは霞さんにあまり関わらないようにします……なので安心してください! ……今まで沢山迷惑かけちゃって……すみませんでした」



 わたしは笑顔でそう言い終えると、「それじゃあ……さようなら」と告げ、その場から走り去った。



 素直に嫌だ、ずっと一緒に居たいですって言えたらどんなにいいだろうか。
 霞さんの気持ちなんて全部無視して、わたしの気持ちをぶつける事が出来たら……? でもそれだと意味がない……


 だったらわたしはどうすればいいの?
 そうなったらやっぱりこの選択が一番正しいのかもしれない。


 わたしの感情を全部捨てて、霞さんに委ねるのが……



 もう、全部全部終わりだ。

 楽しかった日々も、初めて感じる色んな感情も……全部、全部……おしまいだ。




 霞さんが理由を見つけられるまで霞さんに会えない。でも、見つけてしまったら婚約破棄が待ってる。



 ……こんなの地獄だ。


 やっぱり……愛のない婚約が上手くいくはずなかったんだ、最初からそんなのは分かってた。


 でも、わたしはそうはならないって勝手に信じ込んで、勝手に嫌われて……


 バカみたい……


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