触れたい指先、触れられない心

▼離れてく気持ち▼

「んで? なんで俺のとこに来んの?」
「ちょ、久しぶりに会うってのにひどくない?!」


 お酒を飲みながら「そんな久しぶりでもねーだろ」と呟く春樹。
 
「あの人も可哀想だな、こんなお子様相手にしないといけねーなんてさ」

 春樹の一言でわたしの表情は固まる。
 やっぱり誰から見てもそう感じるんだ……


「何泣きそーになってんだよ。んで、……どした?」


 春樹は自分のパーカーの袖でわたしの涙を拭ってくれた。
 なんだかんだ、いつも話をちゃんと聞いてくれる春樹は優しい。

 だからこうやってたまに依存してしまう。
 こんな風に話を聞いて真剣に考えてくれる人はわたしにはあまりいないから。

「霞さんに、距離置こうって言われちゃった……わたしが子供だから……」
「……なんで?」


 春樹は顔をしかめるようにしてわたしに問いかけた。
 こんな事……めちゃくちゃ言いづらいけど……真剣に話聞いてくれてるし、わたしから持ち掛けた相談だし……恥を忍んで正直に話すしか……

「色々あるけど……たぶん決め手はわたしのキスが下手……だから?」



 わたしの返答に、春樹はドン引きしたような表情で「は?!」と返す。


「何言いだすんだよ……ついに頭おかしくなったか……?」


 そう言いながらお酒を流し込む春樹。

 そんなこと言わなくてもいいじゃん……全部本当の事なんだし……


「霞さんに……き、キス……してほしいって言われたの……それでね、わたしが上手くできなくてそれでっ、唇噛んじゃって……」
「……! ゴフッ! コホッ……! な、なに言ってんのお前……っ! んなこと赤裸々に語ってんじゃねーよ!」
「う……あ……ごめんね……? 大丈夫?」
「お前があの人とキスしたとかしらねーし、んなノロケ言いに来たんなら帰れよ……」

 ノロケって……! わたしは真剣に悩んでるのに!!
 だって、現にそれで霞さんと距離置くことになっちゃったし……理由聞いても教えてくれないし……というか霞さん自体よく分かってなさそうだし……
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