触れたい指先、触れられない心
「大体さ、好きでもないやつにキスしてって頼むか?」
「え……? どういうこと……?」
春樹は大きなため息をついて立ち上がった。
「なら、俺にキスしてみろよ」
そう言って春樹の指はわたしの唇に触れた。
突然の事で思わず肩がはねた。
え……?!
どうしてわたしと春樹がキスを?! いや、そんな話だったっけ???
「……なに赤くなってんだよ。だからさ、好きでもないやつとキスなんてするわけねーだろ?」
「あ……。う、うん……って事は、嫌われてないってこと……?」
「そうなんじゃねーの?」
びっくりした……そういうことか……
予想外の春樹の行動に今も心臓がバクバクしてる。
だったら……霞さんはどうしてあんなこと言ったの……?
「……! 詩音、今すぐ帰った方がいい。あの人の付き添いが来た。ここに来たことバレたらやべーだろ?」
「え……? たしかに!!」
霞さんの付き添い……って事は霞さんも……?
いや、霞さんはいない……でもバレたら大変だ……
「春樹、話聞いてくれてありがとう! また来るね!」
「おう、もう二度と来んなよー」
そんな冗談を言いながらも、春樹は優しく手を振ってくれた。
もう、素直じゃないんだからー……
「って……俺なにやってんだよ。あぶねー……」