触れたい指先、触れられない心
◆◇◆
わたしが霞さんと距離を置くことになって、早くも1ヶ月が経過した。
その間に頑張ってお菓子を我慢して3キロ体重を落としたり、メイクの動画を見てバイト代半分を化粧品につぎ込んだり……とにかく努力に努力を重ねた。
「うああ……おなかへったぁぁぁ……」
「最近ずっとダイエットしてるもんな。久しぶりにクレープでも食べに行くか?」
「ううん……あと2キロ頑張って落としたいし……」
ショッピングモールを出ると、ある一台の車が目に入った。
あれ……あの高級車……
もしかして……
そう、あの車は霞さんの……
「ん、なんだあの車……詩音?」
「あれ、霞さんの……」
「え……」
そして運転席のドアが開き、降りて来たのはあの時の運転手……
わたしの姿を確認するなり、後ろの席のドアを開けた。
待って、霞さんに会う心の準備ができてない、一体何を言われるの……もう、答えは出たの……?
「……っ?!」
違う、霞さんじゃない…………
後ろの席から降りて来たのは、霞さんのお父さんだった。