触れたい指先、触れられない心

「わたしは……っ「一つ、選択肢を追加してあげても良いぞ」



 わたしの言葉を遮るように、霞さんのお父さんは提案した。


 選択肢って……一体……



「一週間、儂の愛人となれ。そうすれば距離を置くことを許そう」



 え……? 愛人って……わたしが霞さんのお父さんと愛人関係になるって事?
 そんな事できるわけ……

 でも、一週間わたしが耐えれば……距離を置くことを許してもらえる……?
 そしたら霞さんはこんなところに閉じ込められることも、選択を即急に強いられることもない……


 わたしが我慢すれば……全部丸く収まるの……?



「詩音……! そんな要求聞く事はない! 今すぐここから逃げるんだ!」
「霞よ、残念だな。この女は霞を置いて逃げるようなことはしない。それを分かっているからこそ、この提案をしたのだ」


 霞さんのお父さんが何を考えているのか分からない……
 どうしようもないくらい怖い……でも……




 わたし一人が助かって、霞さんをこんなところに閉じ込めるくらいなら……

 死んだ方がマシだ……!




「……分かりました、一週間だけです」



 わたしの言葉に、霞さんは目を大きく見開いた。
 お父さんは最初から分かっていたかのようにニヤリと笑みを浮かべた。


 悔しい……この人の思い通りになるなんて……


「詩音! 何を言っているのか分かっているのか?!」
「分かってます! ……わたしは、お父様の愛人になりたいんです……ッ、だから……もういいんです……」


 駄目だ、ここで泣いたら嘘がばれてしまう。
 こんなとこで弱みを見せたら……霞さんを守れない。


 わたしは、霞さんを守れるように、強くなる努力をしたのに……


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