触れたい指先、触れられない心
もうダメだ……ずっと抑えてたのに……
泣かないようにって……我慢してたのに……
「わたしも……ッ、霞さんとずっと一緒に居たいです……、だから、距離を置こうって言われて、ずっと破断されるんじゃないかって思っていました。幸せな時間を終わりにされるのが……どうしようもなく怖かった……っ!!」
「すまない……もう二度と、詩音を悲しませないと誓う」
「わたしも、霞さんを幸せにできるように頑張ります……!」
「俺はもう、既に幸せだ。俺から距離を置こうと頼んだのに……ずっと会いたかった」
霞さんも、わたしと同じだった……
今でもその事実は信じられない、まるで夢みたい……
だけど、目の前で声を震わせながら、顔を真っ赤にして……ぎこちなく言葉を発する霞さんを見たら……これは夢じゃないんだって分からせられた。
こんな霞さんは初めて見た。
いつどんな時だって霞さんは強く凛々しく、些細なことでは表情をまったく変えなかった。
それが今は……こんなに必死に、わたしに思いを伝えるために、考えて考えて言葉を紡いでくれている。
嬉しくてたまらなかった。
霞さんの言葉は全部本当で、不安がることも疑うこともしなくていい……全部わたしのずっと夢見ていた二人の姿が叶ったんだ。
「霞さん……あの……」
でも、どうしてだろう……
今まであんなに好きって簡単に言えていたのに……
たったの二文字だけなのに
どうして口から出てこないんだろう……
「好きだ……詩音」
霞さんの優しい声が耳元で聞こえた。
これは……夢じゃないんだ……
霞さんがわたしを好きだと言ってくれる……
「わ、わたしも……好き……です」
こんなに好きって伝えるのが難しいって初めて知った。
霞さんに出会って、本気で好きになって……わたしは変われたんだ……