触れたい指先、触れられない心
▼結婚しちゃいました▼
「……何故そうなる?」
「わたしが昨日、霞さんに……き、キスしたせいだから……責任取ります!」
「その言葉の意味、分かって言っているのか?」
霞さんは冷たい目をしてそう言った。
そうだ、霞さんはずっと冷たい目をしている。笑うどころか、ずっと……
「分かってます、わたしにはもう何もないんです……大切な人にも捨てられて。……だから、大丈夫です」
そう、彼氏もいなくなった。
こんな綺麗な人と結婚できるなら本望だ。
「……本当にいいんだな?」
霞さんは呆れたように呟いた。
「……! はいっ!」
――こうしてわたしは、霞さんの婚約者になった。
このいびつな関係の始まりと共に……わたしは大変な世界に足を踏み入れてしまっていた。