触れたい指先、触れられない心
わたしと霞さんは手をつないで部屋を出た。
そこに霞さんのお父さんの姿はなかった。
おかしいな……もう30分以上経ってるのに……もしかして、最初からこうなる事が分かっててわたしをここに連れて来たって事……?
「……もう夜だな。迎えを呼ぶ、家まで送ろう」
「は、はい……」
もうお別れなのか……もっと一緒に居たいのに……
せっかく結ばれたのに……って、わたしと霞さんって今どういう関係性なんだろう……? 恋人……? で、でも、あんまり自惚れるわけには……
「霞さん……わたしは霞さんの何ですか……?」
震える声で言葉を絞り出した。
どうしよう、きっと霞さんも反応に困る……わたし、なんてことを聞いて……
でも、わたしの予想とは裏腹に、霞さんは真顔で即答した。
それは、あたかも普通だと言わんばかりに。
「恋人、だと思っていたが……不服か……?」
霞さんは恥ずかしいのか、視線を少し逸らす。
どうしよう、霞さんが可愛すぎて辛い。
今まで、霞さんはかっこよくて凛々しくて完璧な人だと思ってた。
だけど……時には恥ずかしがり屋で、可愛いところもたくさんあって……そんなところも含めて、もっともっと大好きになった。
初めて出会った時とは比べ物にならないくらいに。