触れたい指先、触れられない心


「が、頑張ります……」

 そう呟いて霞さんの手をそっと握ると、霞さんはフッと微笑み、優しく手を握り返してくれた。


 ダイエットしたり、メイクの勉強しててよかった……目も当てられないレベルはなんとか回避出来そう。

 それでもまだ釣り合ってないと思うけど。
 きっと会場には可愛い女の子や綺麗な人が沢山いると思う。


「わたしだけ、見てて欲しいなぁ……」

「勿論、そのつもりだが……不安か?」



 嘘、今わたし何て……!
 慌てて口元を手で覆ってみても時すでに遅し。頭の中で考えてた事が言葉に出ちゃうなんて……どうしよう、よくばりだと思われちゃうかな?


「ごめんなさい、口に出すつもりは……」
「構わぬ。それより、わたしだけとはどういう意味だ?」


「パーティには可愛い人や綺麗な人が沢山いると思うから……心配になっちゃって……」


「……元より俺には詩音しか見えていない。他の女などどうでもいい」


 霞さんの手を握る力が少し強くなったような気がした。


「こうやって手を握るだけでも……鼓動が速くなったり」
「っ……!」


 そしてそのまま引き寄せられ、強く抱き締められる。


「離したくない、独占したいと思うのも……詩音だけだ」
「霞さん……ッ」


 どうしよう、恥ずかしすぎて顔が真っ赤になっちゃいそう。


 ……霞さんの鼓動が聞こえる……すっごいドキドキしてる……?

 わたしは霞さんの顔を見上げた。
 霞さんは真っ赤な顔を隠すように、俯いて手で覆っていた。


「霞さん……?」
「すまない、まだこのような事には慣れない」



「こんなに愛しいという気持ちが溢れてくる事など……今まで1度もなかった」



 霞さん……一体わたしをどれだけドキドキさせれば気が済むの……?


「霞さん、大好きですっ!」


 わたしは霞さんに勢いよく抱きついた。

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