触れたい指先、触れられない心

「そういえば渡すのを忘れていた」

 霞さんはそう言って、綺麗にラッピングされた大きな箱を取り、差し出した。

「……? これは?」
「詩音のために用意したドレスだ」


 わたしのためのドレス……
 丁寧に結ばれたリボンを解き、包装紙を剥がして箱を開けると……


「わぁ……かわいい……っ!」


 淡い桜色で可愛らしいシフォン生地のミニドレス。
 沢山のレースで綺麗に装飾され、たくさんの真珠や宝石が散りばめられている。


 こんなかわいいドレス、わたしが着るの……?


「喜んでもらえて良かった。……詩音に似合うと思って用意した」
「え……このドレス、霞さんが……?」
「ああ、俺が選んだものを着て欲しかった……」


 霞さんがわたしのために選んでくれた……それも、こんなかわいい最高のドレスを……

 わたしは嬉しくて思わずドレスをぎゅっと抱きしめた。

 勿体なくて着れないよ……でも、霞さんに喜んでもらいたい……

「霞さん、本当にありがとうございます!」


 霞さんは微笑んでわたしの頭を優しく撫でてくれた。


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