触れたい指先、触れられない心
「次父が来るまで、ここにいなくてはいけない……短い間だがすまない」
「そ、それより……霞さんはわたしなんかでいいんですか?!」
さっきからかなり淡々としてるけど……
何の変哲もないただの女子高生なんかでいいのかな? 見たところ、霞さんはかなりモテそうだし……婚約者だって、探すどころか女性の方からわんさかきそうなくらい……
「詩音は、街にいる女とは種類が違うから斬新でよい」
「……ッ!」
”詩音”
今、詩音って呼んでくれた……?
分かりやすいほどに、何故か胸が高鳴る。
「ま、街にいる女……?」
「いや、詩音は……天真爛漫すぎるというか、見ていて飽きぬ。」
天真爛漫……それって誉め言葉……?
「あ、それと……ここにいる間、学校に行けないって事ですよね……?」
「な……! 学生だったのか?」
「は、はい……」
あ、そっか……バーで出会ったんだもん、まさか高校生だなんて思わないよね……
「なんてことだ……まさか学生の女と婚約をしてしまうなど……」
「すみません、昨日はちょっと嫌なことがあって……」
そうだよ、元はといえばあの元カレが全部悪いんだ……。アイツに会わなきゃ……ヤケ酒もしなかったし、こんな場所に閉じ込められるなんて事もなかった。