碧花の結晶
教室に入ると、もう私たち以外のクラスメイトは揃っていて、打ち解けていたらしかった。
見ると、女の子1人と男の子2人がワイワイ喋っている。
「あ! たしか、代表挨拶をしてた子だよね!」
教室にいた女の子が、私たちに気づくなり話しかけてくる。
薄茶色のショートカットにぱっちりした目だ。なんだかイメージは子猫で、妹のような可愛さがある。
「あ…うん、そうよ。
あたしはルーナ・カ…じゃなくて、アルナスよ。」
「そうなんだ! てか、もう名前は入学式で覚えてるんだけど…ルーナちゃんって呼ぶね!
私はシーナ・エルデだよ」
「ええ、よろしくね。シーナ。」
すると、他の2人も挨拶をしてきた。
「俺はオルフェ・ネルトフだ。よろしくルーナ。」
口調は冷静を装っているのだけど、どうやら彼は弟キャラだ。 幼さが少し残っている。
「ふふ、よろしく、オルフェ。
可愛いわね…」
ちょっとからかうつもりで「可愛い」と言ったけど、オルフェは顔をボッと火照らせて、慌てて照れ隠しをしだす。
「ななななな、何言ってんだ! 俺は男だぞ!」
「あはは、少しからかっただけよ。 」
これから何かと からかいようがありそう…なんて私は密かに思う。
「僕はラルク・マドロスだよ。よろしくね。」
そう言って優しく微笑んだ。
オルフェと比べたらこちらは面倒見のいいお兄さんタイプ。
「こちらこそよ。ラルク、よろしくね」
みんな個性があって、楽しそうなクラスになりそう、そう思いながら私は少し笑った。
「そういえば…みんな貴族なんだ。しかも結構位の高い」
そう。みんなの苗字を聞いたら、全員名のある貴族ではちょっとびっくりした。
「そうだね…でも、学園では権力は無視して、学力や実力とかで暮らすっていう暗黙のルールがあるんだ。
だから、…確かルーナは貴族じゃないよね?でも、そんなのここでは考えないでいいから! 普通に友達!」
おお、そんなルールがあるなんて知らなかった。意外と学園生活は気楽に行けそう?
そして私は改めてクラスメイトのメンツをみた。
無礼講だと言われても、少し気になる。
貴族は、家によってハッキリ力の順位がつけられている。
1位はネルトフ家
2位にマドロス家
そして3位がエルデ家
だから、このクラスでは権力でいったら
オルフェ-ラルク-シーナの順に強いことになる。もちろん私は最高権力者だけど。
ちなみにミラは貴族ではない。自分の実力だけで王の側近まで上がってきた強者だ。
ま、シーナがこういっている以上、学園内では権力は考えずに済む。
「じゃあ、改めてみんなよろしくね」
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全員の自己紹介が終わる頃、男の先生が教室に入ってきた。
「おはようございます。
今年はAクラスが5人もいて、優秀な年で学園長も喜んでいましたよ。」
先生は、話しやすそうな若い先生だった。
結構なイケメンで、シーナやミラが喜んでいるのではないかと思って2人の方を見たけど、喜んでいたのはミラだけで、シーナは普通の顔をしていた。
「僕はこのクラスの担任を受け持つことになりました、デオーネ・ベーゼブリックです。
デオと呼んでください。
では、今から授業について説明しようと思います。」
デオ先生の話をまとめると、
この学校の授業の仕方は特殊で、Aクラス以外は普通に規定の授業に参加しなければならないが、Aクラスの生徒は授業には基本自由参加。
自分で受けたい授業があれば、B〜Dクラスの授業に入り込んで受ける。
朝の出席をとる時にホームルームに居れば問題ないとのことで、それが終わればあとは自由行動。
年に2回あるテストで赤点を取らなければ基本的に進級できるとの事。
…自由に行動できそうね。良かったわ。
私は今まで学校という物に行ったことがなかった。
孤児院にいた頃は、図書館に通いつめて読み書きや薬などの日常に必要なことは時間の許す限り勉強していたけど。
だから、あまり行動を固く縛られるのは嫌だと思っていたのだ。
「これで説明を終わります。質問がある人はいるかな。」
誰も質問がないようなので、ホームルームは終わりとなった。
今日はもう授業は無いらしい。
ということで、私達は寮に行くことにした。