碧花の結晶




ピピピ ピピピ ピピピ…


通信用の魔具が鳴り出した音で、私は目を覚ました。時計を見ると12時半だ。



発信元はシーナだ。
魔具のボタンを押す。



「はぁ〜い、どうしたの?」



「『はぁ〜い』じゃないよ!お腹すいたでしょ。食堂にご飯食べに行こう。私の部屋集合ね! ミラも一緒に待ってるんだから。」




寝起きだったせいか、自分が空腹ということに気づかなかった。


一旦気にすると、どんどんお腹がすいてきた。


「お腹空いた!! すぐ行くね!」



制服のまま寝っ転がったから、少しシワができているので、
火魔法と水魔法でチャチャッとシワを伸ばす。








シーナの部屋のドアをノック。


「あ、やっと来た〜みんな行くよ!」




…みんな? ご飯を食べるのは、他にミラしかいないはずよね…?






違った。
部屋からはシーナとミラの他に、オルフェとラルクも出てきた。



「あれ? 3人で食堂に行くのかと思ってたけど。」




「せっかくだからみんなで行こうと思って!その方が楽しいでしょ?」



「そうです! その方がみんなの親睦を深めるにはちょうどいいと提案したのです!!」




2人はとても張りきっている。
というか、ミラが私にだけ敬語を使うのはやめて欲しい…どんな関係なの?とか聞かれたらどうするのよ。

この前「敬語をやめて」と言ったら、完全拒否された。王様にタメ口はとても気が引けるらしい。
と言っても、私からしたらミラの話す敬語はだいぶ崩れているんだけど…

そしてついに、「それなら、みんなに敬語を使います!」とミラは開き直った。

まさか本当に同級生にも敬語になるとは思わなかった。









グゥゥウ〜〜




間の抜けた音が響いた。
タイミング悪く、みんなが喋ってない瞬間になったもんだからとてもハッキリと聞こえてしまった。


無意識にみんなの顔を見ると、オルフェの顔が真っ赤になっていた。


…わかりやすいね。うん。

オルフェのお腹がなったんだね…





「………ぶはっ!」





私は吹き出してしまった。





「プクククク…ご、ごめん…ちょっと…プッ」




「…わ、笑うなぁっ!」




つられて他のみんなも吹き出した。



「笑うなんて失礼でしょ! あはははは!」


「そういって、シーナが1番笑ってるじゃないですか!…ふふふふふ…」





しばらく笑いが耐えなくて、オルフェはすっかり拗ねてしまった。



みんなで謝り倒して、やっとオルフェの機嫌を直すのは少々大変であった…










「何だか、お昼ご飯を食べる前に仲良くなっちゃった?」



「いいんじゃない?

俺はこのクラスメイト、今までの中で結構好みだよ。」



ラルクが「好み」という単語を発したことで、シーナの顔がボンと赤くなった。

そんな単語で普通照れる? と思ったけど…私はノーコメントでいこう。



「わわわ、わたしも…!

ここここここのみゅ…っ」



盛大に噛んだ。





「ここのみゅ?」


ラルクはちょっと天然らしい。
ダイレクトにシーナへ聞き返した。 うわぁ…恥ずかしいだろうな。



シーナとラルクは前から交流があったのだろうか? 貴族同士だから…パーティとかであったりしていたのだろうか。

それとも、単なるシーナの一目惚れ?



(後で根掘り葉掘り聞こう。)




そう思っていたら、食堂に着いた。

寮があんなだったから、薄々分かってはいた…けど、やっぱ驚くよね。



食堂はさながら高級レストランみたいなかんじ。1年前だったら今の私がこんな生活をしているなんて想像つかなかっただろう。

というかそれ以前に私自身が王様になるという一大事があったから、予想もクソもないが。




メニューを見たら、全く聞いたことの無い料理と、とんでもないお値段が書いてあった。



「…これ、ゼロの数1個──いや、2個ぐらい間違えて増やしちゃってない?」



「あはは…学食でこの値段はおかしいよね」



「しらねぇの? Aクラスの特権で全部タダだろ?」




「え!!」



知らなかった。




「バカじゃね?
入学式で聞いたばっかじゃん。」


オルフェがやれやれという感じに言ってきた。



「だって…寝てたんだし!
仕方ないよ!」



「──っは? 寝てたの?

じゃあ あのご立派な入学式の代表挨拶はどっから出てきたんだよ。」



「…うーん、テキトー」



私は、ルーシェとして王宮で会議をしてるから、何だかそういうことには慣れていたし。








「はいはい、2人とも?
お喋りはそこまでです。早くご飯を食べましょう!」




「そうよ! 私お腹すいた!」





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈











この後、私達はそれぞれ好きなものを頼んで食べた。学食は、さすがに王宮の食事には適わなかったけど、そこら辺のレストランよりは格段に美味しかった。

これがこれから毎日無料で食べれると思うとウキウキしてきて、歌いながら寮に戻っていたらまたオルフェに突っかかられた。





そして私とオルフェをミラかラルクが諌める。

ラルクが喋る度に、シーナがおっとりした顔をするのでそれも面白かった。




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