碧花の結晶
連絡
夜
「ふぅ…」
昼間はずっとシーナの部屋で喋りまくってて疲れたよ。
ベッドに突っ伏して、ウトウトしていた。
お昼に長々と昼寝したのに、睡魔はどんどん押し寄せてきた。
部屋は木の香りがして気持ちがいい。
シーナの部屋に行って気づいたけど、部屋はそれぞれの部屋主の好みでカスタムされているらしい。
入学したての頃は、みんな自分と同じような部屋だと思っていたので この仕組みに気づいた時はとてもびっくりした。
私の部屋は基本木造で、カジュアルな雰囲気に対して、シーナの部屋はポップでカラフルな、いかにも女の子という感じ。
ミラの部屋にも行ったけど、彼女の部屋は剣がいっぱいあった。
さすが剣マニア。
彼女は街へ繰り出しては、珍しい剣のパーツを買ってきて剣をカスタムしているのだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ともあれ、眠りにつこうとしたその時…
ピピピ、ピピピ、ピピピ…
魔道具がなった。
一瞬目覚ましと勘違いして、もう朝になってしまったのかと錯覚を起こしてしまう。
(──何? こんな時間に…)
魔具には、ある人物の名前が映し出されていた。
【レイ・フォーゲル】
レイは、このカハワート王国の宰相。
史上最年少で宰相まで地位を上り詰めた天才。
そして、私が…ルーナ・カハワートとして心を許せる数少ない人。
レイは礼儀正しい人だ。こんな時間に呼び出すということは、相当の事態があったということ。
見ると、メールではなく通話ボタンが光っていて、慌ててボタンを押す。
「…はい。どうしたの? レイ。」
『ルーナ様…いえ、立場もあるので、ここではルーシェ様と呼ばせていただきますが』
私の本名は当然〝ルーナ・カハワート〟だけど、公式には〝ルーシェ・カハワート〟とされている。
国民や貴族から、兄であるルーシェが死んだと悟られないようにするためだ。
宰相であるレイや、1部の王宮に務める人は私がルーシェの偽物だってことを知っているが、大多数は私のことを本当にルーシェだと信じている。
私の正体を知っているのは、レイ、ミラ、専属のメイド、あとは王宮医師ぐらいだろう。
『明日、王宮に来ていただきます。
マドロス様が、明日お見えになるそうです。』
「…え、ちょっと、急すぎない?
明日普通に授業あるんだけど」
『それについては、そちらで出席をとってから来ていただいて構いません。
そちらの学校の授業形態は把握しておりますので。』
「あ、そっか…Aクラスだもんね」
じゃあ、明日は王宮に行くか……
「…って、ちょっとまて」
『どうしたんですか?』
「さっきの、もう1回言って!」
『ですから、出席をとってから…』
「違う違う! もっと前よ!
誰がどうしたって!?」
『マドロス様がいらっしゃるので、会食を開いでいただきます…が』
やばいやばいやばい…
マドロスって、聞き間違いであって欲しいんだけど!
タイミングが良いのか悪いのか、 レイは釘を刺すように付け加えた。
『もう少し申し上げますと、マドロス家の次期当主である、ラルク様もいらっしゃいます。』
──さて、どうしようか。