碧花の結晶





会食の場所は、中庭に面したバルコニーということだった。




今日は暖かく風もあまり無いという恵まれた天気だったから、レイがそう提案してくれた。





「ねぇアスカ〜緊張してきた」




「何をおっしゃいます…あと、くれぐれもマドロス様の前では女言葉厳禁ですからね。」




公の場では、さすがのアスカも敬語になる。



「あ、女言葉になってた…」




「気をつけてください。
そろそろ、予定の時刻となりますのでお出迎えに参りましょうか。」



「わかった。行こう。」







┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈







門まで行くと、遠くからキラキラした馬車が走ってくる。
さすがは有名貴族。遠くからでも品のあるデザインの馬車だと分かる。



「お、来ましたね」




「アスカこそ、お客様の前では敬語を崩すなよ。」




口調を変えて、気を引きしめる。





馬車からは、使用人だと思われる男の人

マドロス家当主のラルム・マドロス



そして、次期当主であるラルクも出てきた。







「よく来てくれた。マドロス殿。

そちらはご子息か。」







こんなにも年上の人に敬語も使わずに話すのは気が引けるな…

自分がそこまで偉そうにしていいぐらいに、 すごい王になったつもりも無い。





「こちらこそ、突然の伺いを受け入れてくださりありがとうございます。国王陛下。」





〝国王陛下〟なんてあまり呼ばれることはないから、 少しくすぐったくなる。




「そんなに堅苦しくしないでくれ…


呼び方も、 名前で構わない」




「ありがとうございます。

では、ルーシェ様と、改めて。」




王宮にはいって、
バルコニーの椅子に座る。



アスカが紅茶とお菓子を運んできた。
ふんわりとフルーティーな香りがしてきたから、 多分フルーツティーだろう。



「どうぞ、ごゆっくり おくつろぎ下さい。」




「ありがとう。

昼食の時間まで少し時間がある。
それまでゆっくりしてくれ。 何かあったら使用人を呼んでもらって構わない


俺は昼食の時間まで外しておくが…よろしいか?」




「はい。 ではまた。」





元々は、 このまま直ぐに昼食を始めようと思っていた。

それをやめて、 わざわざ席を外したのは、予想以上にラルクが緊張していたからだ。




いつもクールなラルクが緊張するなんて予想外だったけど、 やっぱり王がいたら緊張するんだろう。




だから、 少し落ち着ける時間を作ったのだった。
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