碧花の結晶
«ラルクside»
「よく来てくれた。マドロス殿。
そちらはご子息か。」
そう言って、国王は俺の方を見た。
王の顔を見たのは初めてだった。公式のパーティーで見たことがあるものの、 遠目からだったのでぼんやりとしか人相は知らなかった。
自分と同い年ということは聞いていたが、 こんなにも小柄な人物だとは思わず、 拍子抜けしてしまう。
(…………?)
王の青い目が、 ルーナを思わせた。
彼の綺麗に整った顔もルーナを連想させる。
(何を馬鹿な想像をしているんだ…俺は。
声だって全然違うじゃないか。)
それほどまでに俺は緊張していたのだろうか
ルーシェ様に目を向けられたにもかかわらず、挨拶も出来なかった。
父上と俺を残して部屋を出ていったのも、俺が緊張しているのに気を使わせたのだろう。
「陛下はとても素晴らしい御方だな」
「そうですね…この国は恵まれていると思います。」
先程の少しのやり取りで、 やはり父も彼の人物像を読み取ったらしい。
「俺と同い年とは思えません。 不甲斐ないばかりです…」
「そんなことを言うものでは無いぞ?
私だって昔はそう思っておったがな、 案外大丈夫なものだ。」
「そうですか…」
しかし、国王など並の人間には務まらないだろう。
改めて、 尊敬の念をルーシェ様に向けたのだった。