友達が欲しい少年と種姫さま
けれど、あれから十五年経った今でも、ふと思い出す。
種を蒔いていた彼女の事を。

和歌山にいた頃、仲の良かった友達の事は全く思い出せないけれど、
あの子との日々は、記憶が磨耗して顔さえ思い出せなくなった今でも、

(ああ、そういえば…)
って思い出すんだ。

両手で砂を掬い上げたみたいに、
ぼろぼろと記憶は零れてしまうけれど。

それでもおぼろげながらも、
甘酸っぱいような、ほろ苦いような、それでいて照れくさいような感情とともに、
僕の胸に去来するなつかしい思い出があるんだ。
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