桜舞う下で、君に誓いを~恋した神様~
私に手を振り、男の子は走っていく。

私はその後ろ姿を、高鳴る胸を押さえながら見ていた。



翌日。

私は神界に帰ることなく、あの人を探して町を彷徨うように歩く。

「おーい!」

聞き覚えのある声がして、私は声がした方を向いた。

「あ、昨日の……」

「こんにちは」

「庚(かのえ)、知り合い?」

ショートカットに青目の女の子が、男の子に近づく。

「うん。昨日、不良?に絡まれてたから助けたの。魔法で……あ、そうだ。自己紹介してませんでしたね。僕は、鳴神(なるかみ) 庚と言います。昨日も言った通り、僕は中学3年生。こっちは、僕の幼なじみの雪代 葵(ゆきしろ あおい)です」

「どうも。雪代 葵です」

自己紹介をして、葵は頭を下げた。

「……私は、天火(あめのひ) ほのかです」

本来神様には名字は無いんだけど、人間界に来るときのために皆は、名字を考えてるんだ。

「ほのかか……よろしく」

ニコリと葵は笑う。庚は、何か不思議そうな顔をしていた。

「……庚?」

ふと庚を見た葵は、表情を崩して庚をじっと見る。

「……い、いや……何でもない。気のせいみたい。前にも聞いたことあるなって……」

「デジャブってやつじゃない?」

葵の言葉に、庚は「多分、そうだね」と頷いた。
< 5 / 97 >

この作品をシェア

pagetop