桃の華〜溺愛イケメン社長〜
「華ちゃん、タナカさん、今日はよろしくお願いします」 

「は、はいっ!」

「では、また後ほど」

たったそれだけの会話なのに嬉しい。
さっき桃田さんと目があってから、うるさいほど高鳴る胸の音といい、ほんとどうかしちゃったみたいだ。


「華ちゃん、顔真っ赤にしちゃって可愛いね」

「え?」

隣にいたタナカさんがとんでもないことを口にした。

「わ、私、顔赤くしてますか?」

「うん。桃田さんカッコいいしね」

うそ…顔に出てた?
恥ずかしいよ。

それから、イベントが終わるまで桃田さんを視界に入れないように努力した。
視界に入ってくると、すぐ逸らした。
また目でも合ってしまえば絶対顔に出てしまうから。

片付けを済ませるとタナカさんとイベント会場を後にし、一二三へと戻った。

「お疲れさま、華ちゃん。店長に報告しておくから今日はもう上がってくれていいよ」

「はい、ではお先に失礼します」

タナカさんにそう言われ、着替えを済ませ店を出ると、車のクラクションを鳴らされた。

その音に反応して車の方を見ると、車から桃田さんが出てきた。

また胸がドキドキするけど顔に出るのが嫌で、小さく深呼吸をした。
どうか、顔が赤くなっていませんように…。


「華ちゃん、お疲れさま。今日はありがとう」

「お、お疲れさまです!店長にご用ですか?」

出来るだけ平常心で話さなきゃ。
右手を頬に当て体温が上がっていないか確認する。

「店長じゃなくて、華ちゃんを待ってたんだ」

「え?」

わ、私!?
私を待っていたってどういうこと?

「ご飯でも食べに行かない?」

「私ですか?」

「そう、華ちゃん」

何がなんなのかわからず、桃田さんにご飯に誘われ、私は行ったこともないレストランへと連れてこられた。

おじいちゃん以外の男の人とふたりで食事だなんて初めてで、緊張する。
そうじゃなくても、桃田さんといるとドキドキするのに。

緊張とドキドキと、高級そうなレストランの雰囲気でなんだか落ち着かない。

それなのに、桃田さんはメニューを見て私の分までスマートに注文をしてくれる。


「華ちゃん、今日は疲れたでしょ?」

「いえ、全然!大丈夫です」

「元気だね、若者が羨ましいよ」

若者って、桃田さんも27歳なんだし若者だと思うけど。

「桃田さんも、十分お若いと思います」

「女子高生からしたらおじさんでしょ?」

「いえいえ、全然!若いしカッコいいし素敵です!!」

素敵な大人の男性って感じで、おじさんだなんてありえないです。
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