桃の華〜溺愛イケメン社長〜
「昔から華を大事にしてくれてたものね。華は両親を亡くし、私も歳だしいつお迎えがくるかわからない。あなたがいてくれたら華がひとりになることはないわね」

おばあちゃん…。
私のことを気にかけてくれてたんだね。

だけど、そんなこと言わないでよ。

「おばあちゃん、長生きしてね」

「ありがとう、華」

おばあちゃんは目に涙を溜めながら、優しく微笑んでくれてる。

私、おばあちゃんとおじいちゃんに育てられて本当に良かった。

「律君、華をよろしくお願いします」

「はい」

おばあちゃんが桃田さんに昼食を食べていくように誘い、おばあちゃんは台所へ支度をしに行った。

桃田さんのことをおばあちゃんが認めてくれて本当に良かった。

おじいちゃんが決めた人が桃田さんで、こんなに早くおばあちゃんに許してもらえるなんて思っていなかった。

私と桃田さんは小さな頃に出会っていて、再会して好きになって、こんな偶然ってあるのかな。

偶然だったのかな?

「桃田さんっ」

「ん?どうしたの?」

「桃田さんは最初から知っていたんですか?私がその…」

両親のお葬式の時に会ってたなら、私はまだ5歳だ。
桃田さんは15歳だし、私のことを覚えているばす。

なのに、今までそんなことを一言も聞いたことがない。

「ぶつかった時は気づかなかったよ」

私が一二三のバイトの面接に行った時に、桃田さんにぶつかってしまったんだ。

あの時から私は桃田さんのことを意識していたんだと思う。

「だけど、一二三で自己紹介をしてくれた時にすぐ気づいた」

そう言って、桃田さんはクスクス笑ってる。

「ど、どうして笑ってるんですか?」

「いや、あの時の華ちゃん可愛かったなーって。一生懸命レジしてて」

「あ、あの時は初めてですごく緊張してて」

絶対テンパっていたと思うし、恥ずかしいよ。

「華ちゃんがうちのビルの前にいたことあったでしょ?」

「はい」

バイト先で桃田さんのことを聞いて、気になってしまいついついビルの前まで行ってしまったんだ。

「あの時、俺のこと覚えてるのかなって期待しちゃったよ」

ああ、それであの時
“俺に会いにきたんじゃないのか”って言っていたんだね。

私は全く気づかなかったよ。


< 34 / 117 >

この作品をシェア

pagetop