桃の華〜溺愛イケメン社長〜
「えー、なにそれ?一目惚れ?」

翌日、登校するとさっそくセリナに昨日のイケメンの話をした。

「そ、そんなんじゃないよ!ただカッコ良かったってだけで」

「でも、ドキドキしたんでしょ?」
セリナの問いに首を縦に振って答える。

「それって恋じゃないの?」

「違うよ!何か、こう…芸能人をかっこいいって思うような感じ?」

もう二度と会うことすらないだろう人に恋なんてしていない。
もしかしたら、アルバイト先のお客さんでまた会うかもしれないけど、私みたいな高校生が到底相手にされるとも思わないし。

「そう?でも和菓子屋にまた来たら恋に発展するかもしれないじゃん」

少しだけ、また会いたいとは思う。
だけど、恋だとかそんなことはありえない。


放課後、和菓子屋“一二三”へと初出勤をした。

「和泉さん、こちらタナカさん。タナカさんはベテランさんだから、いろいろ教えてもらって」

「はい」

お店に行くなり店長にそう言われて、タナカさんにいろいろ教えてもらう事となった。

「華ちゃん、何年生?」

「2年です」

「高2の時だったら、毎日渋谷で遊んでたな!」

あっという間にタナカさんと仲良くなり、タナカさんは自分の高校生の頃の話をしてくれた。

「ルーズソックスもコギャルもわかんないでしょ?懐かしいな」

気さくで話しやすい人で良かった。
タナカさんのおかげでアルバイトの初日は無事に終了した。

スーツのイケメンは来店する事はなく、少しだけガッカリしてる自分がいる。
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