桃の華〜溺愛イケメン社長〜
「門限までまだ時間あるね。ちょっと車行こうか?」

後部座席に2人並んで乗り込むと、私は男の人たちに絡まれた出来事を話した。

今から考えれば大したことじゃなかったのに、どうしてうまく逃げられなかったんだろう。

「無事でよかったよ。キムラ君のおかげだね。でも、抱きしめたのは許さないけどね」

え?さっきの見られてたの?

他の男の人に抱きしめられたなんて、私が逆の立場だったら傷ついてしまう。


「ごめんなさい」

「でも、華が俺じゃなきゃ駄目だって言ってたから今回は特別に許してあげてもいいかな」

「き、聞いてたんですか?」

聞かれていたなんて恥ずかしいよ。

「抱きしめられてるから離れさせようと行ったら、聞こえたんだ。華は断れないところがあるからそのまま流されちゃうんじゃないかって心配だったけど、ちゃんと言ってくれて嬉しかった」

優しい表情でそう言ってくれる桃田さんにギュッて抱きしめられたい。

私からしちゃったら駄目かな?
そもそも私にそんな勇気あるのかな。

「どうしたの?俺の顔に何かついてる?」

「い、いえ。何もついてないです」

桃田さんの顔を見すぎてしまっていた。
やっぱり私からなんて無理だよ。
心臓がもたない、爆発してしまう。

「じゃ、降りようか」

そう言って、車のドアに手をかける桃田さんに、横からギュッと抱きついた。
考えるより先に体が動いちゃったけど、どうしよう。

いきなりこんな事して桃田さんに変に思われていないかな。
私は目をギュッととじて、桃田さんの顔を見ないようにした。

「華ちゃん、離して」

そうだよね。
車から降りようとしてたのにいきなり抱きしめちゃって迷惑だよね。

私は桃田さんに回していた腕を離した。
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