桃の華〜溺愛イケメン社長〜
桃田さんの車に乗り込むと袋を渡された。

「これなんですか?」

「防犯グッズだよ。貸してごらん」

昨日のことを気にして用意してくれたんだ。
それも昨日の今日でこんなに早く。
仕事で忙しいはずなのに。

「これとこれは防犯ブザーでしょ。鞄につけておけるような可愛いのにしといたよ」

桃田さんの言う通り、防犯ブザーとは思えないような可愛いデザインだ。
鞄につけていても変じゃないようにって、そんな事まで考えてくれて、本当に優しすぎるよ。

「どうして2つなんですか?」

「2つじゃないよ、まだ3つほどあるよ。いっぱい鳴らしたら大きな音になるからね」

真剣にそう話す桃田さんを見ていたら、何だかおかしくなってきた。

「華ちゃん、何笑ってるの?」

「いえ、何でもないです」

「ちゃんと話してよ」

そう言って、桃田さんは私を真っ直ぐ見つめて離そうとしない。

「桃田さんが私の事に一生懸命になってくれてるから」

「当たり前でしょ?華ちゃんのことなんだから」

今度は嬉しくて笑顔と言うより、ニヤニヤしてしまう。

「華ちゃん…華は余裕だね。俺は必死なのに」

さっきキムラ君に言われたことをまだ気にしてるんだ。
桃田さんって案外、執念深い?

「これでも余裕でいれるかな?」

えっ…?
桃田さんの唇が私の唇に優しくそっと触れた。

全身に心臓があるんじゃないかってくらい、体中がドクンドクンとしてる。
こんな感覚初めてだよ。

唇を離した桃田さんは優しく頭を撫でてくれる。

「これ以上は駄目だね。華ちゃんの心臓が持ちそうにないね」

結局、私の方が余裕がないんだ。
いつも桃田さんにドキドキさせられっぱなしだよ。

「ゆっくり俺とのキスに慣れていこうね」

さっきの私みたいにニコニコ顔を見せる桃田さん。

私は初めてのキスで、しばらくドキドキが収まりそうにないよ。
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