桃の華〜溺愛イケメン社長〜
「華ちゃん、桃田さんのことタイプなの?」

帰って行ったお客さんをずっと見ていたせいかタナカさんに聞かれた。

「そ、そんなんじゃないです」

「カッコいいもんね。年下じゃなきゃ私が狙ってたよ」

あのお客さん、桃田さんって言うんだ。
下の名前は何て言うんだろう?
さっきカードを受け取ったときに、こっそり名前を見ておけば良かった。

「あんなに若いのに社長なんだよ」

「しゃ、社長?」

「うん。お店の前のビルの社長さん」

高校生の私には社長ってだけでも驚きなのに、お店の前のビルってすごく大きな会社なんじゃ…

私は帰りにコソッと、お店の前のビルを見てみた。
こんな大きなビルの会社の社長さんなんだ。

私はしばらくの間ビルを見上げていた。

「何してる?」
優しい声が聞こえゆっくり顔を下ろすと、桃田さんがいた。

とっくに就業時間は過ぎていて、ビルの灯もチラホラしか付いていないのに。
まさか、よりにもよって、桃田さんが出てくるなんて思っていなかった。

「えっと、あ、大きなビルだなーと思って」

桃田さんのことが気になって見てたなんて言えない。

「なんだ、俺に会いにきたんじゃないのか」

「えっ?」
もしかして、桃田さんを気になってることバレてるの?

何か言った覚えはないし、顔に出てたんだろうか。
昔から、思ったことが表情に出るって言われてきたし。

「俺、桃田律。ここのアクアって会社で仕事してる」

…桃田律。名前まで素敵だ。

「名前に聞き覚えない?」
桃田さんにそう聞かれて、首を傾げる。

考えて見ても、全く聞き覚えなんてない。

「なんだ。俺のこと知ってやって来たのかと思った」

桃田さんの言った意味がわからなかったけど、その意味を理解したのは翌日のことだった。
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