桃の華〜溺愛イケメン社長〜
「社員たちも驚いているでしょうね。クールな社長が華さんの前だとデレデレ鼻の下を伸ばしてるなんて」

エレベーターに乗るなり、マキノさんに言われた。

「最近、社員たちが噂してますよ」

「知ってるよ、ロリコンだって言われてるんだろ」

やっぱり桃田さんは、ロリコンだって言われてるの知ってたんだ。

「それもありますけど、社長が優しくなったって言ってますよ」

え?桃田さんはすごく優しいのに、社員さんには優しさが伝わっていないのかな。

「前は社員の前じゃニコリともしなかったのに」

そうなんだ。
私の知っている桃田さんじゃないみたい。

「では、私は仕事に戻ります」

社長室に到着すると、マキノさんはそう言って出て行った。


社長室に入り、ソファに桃田さんと並んで座る。

「仕事先にもらったクッキーがあるんだけど食べる?」

「はい」

そう言って、桃田さんがクッキーを出してくれる。

これって…今SNSとかで人気の花の形をしたクッキーだよね。
この前見たテレビで行列が出来てるって言ってた。

1週間前に来た時は、高級なチョコレートを得意先でもらったって言ってたけど、もしかして私が来ると思って用意してくれてるのかな?

優しい桃田さんのことだからあり得る。

「もしかして、桃田さんが買ってきてくれたんですか?」
 
「バレちゃったね。コーヒー入れてくるね」

桃田さんっていつも私の事を考えてくれてるよね。

今日のことだけじゃなく、デートの時もいつも行くところも決めていてくれて、いろいろと準備をしてくれている。

桃田さんにしてもらうばかりじゃなく、私も何か桃田さんのためにしたいな。



「りーつ!!」

社長室の扉が開き元気よく入ってきたのは、コーヒーを入れに行った桃田さんではなく、サングラスをかけた女の人だった。

「誰?もしかして、新しいCMモデル?」

ソファに座る私に気づき、私をジロジロと見定めされるように見て来られてる。

「い、いえ」

「ねぇ、律は?」

桃田さんのこと“律”って呼ぶんだ。
誰なんだろう?
どこかで見たことある気がするんだけど。
< 62 / 117 >

この作品をシェア

pagetop