桃の華〜溺愛イケメン社長〜
桃田さんは仕事がどれだけ忙しくても文句も弱音も言わない。

それはきっと仕事が大好きだからだと思う。

そんな桃田さんから仕事を奪っちゃいけない。

桃田さんに相談すれば、もしかしたら私を選んでくれるかもしれないけど。

優しい桃田さんのことだから、絶対に無理をすると思うの。

無理をして、いつかの時みたいに倒れてほしくない。

それに、もしも仕事を捨てて私を選んで一緒にいてくれても、私は喜べないよ。

だから、別れよう…。


「どうせ律もあなたみたいな一般人を本気で好きなわけじゃないわよ。物珍しくて遊んでるだけだと思うの。だから私がいなくても、いつかは律に捨てられてたと思うわよ」

「桃田さんはそんな人じゃないです!人の気持ちを弄ぶようなことはしないです」

優しくて強くて、カッコよくて。
人に隙を見せたり甘えたり出来なくて。
それから、すごく思いやりがあって…。

だから、私はそんな桃田さんに遊ばれたなんて思えない。

桃田さんは、そんな人じゃないよ。

「あなた律のこと何も知らないのね!律がどれだけの女を弄んできたか知らないの?」

「…知りません」

私は桃田さんの過去の恋愛や彼女について何も知らない。

大人なんだし、今まで付き合ってきた人もいたに決まってるのに。

「もう別れるんだし、知る必要もないだろうけど教えてあげるわ」

「いえ!いいです!」

私は優しくしてくれた桃田さんを、大切にしてくれた桃田さんを、強く抱きしめてくれた桃田さんを信じる。

「桃田さんと別れます。だから写真は公表しないでください。お願いします」

そう言って、頭を下げた。

そして、私はホテルを後にした。

ホテルを出た瞬間、止めどなく我慢していた涙が流れてきた。

桃田さんを守るために決断したのに、どうして涙がでるの?
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