あの日の青に、君だけがいない



“受験も終わったから、久しぶりに走らないか”


そんなメッセージがスマホを震わせたのはつい1時間前だ。


私と柚は高校を卒業するまで同じ陸上部に所属していて、休日はよく2人で川縁を走るような仲だった。


陸上部は幽霊部員が多くて、加えて元々の人数も少なかったから、実質毎日欠かさず部活に顔を出していたのは私と柚くらいだった。


私と柚の2人だけが好きだった。


走ることが、何よりも。


風に溶けていく感覚が引退してしばらく経った今も、私を離してくれない。


きっと柚もそうなんだろう。


だからそのメールには返信せずに、私は柚の電話番号に直接かけた。
< 2 / 9 >

この作品をシェア

pagetop