one more chance
外に出ると雨が降っていたが、傘をさすのも面倒だった。


ふと対局場を出るときの将棋連盟の役員の声が浮かんできた。


『…吉岡くん、君はまだ25歳だ、来年もチャンスがあるんだから諦めちゃダメだ…』


その言葉を思い出すと涙が出そうになり上を向いた。



「来年じゃダメなんだよ…」



今年のはじめに両親と交した約束-

-今期でプロになれなかったら家業を継ぐ-


もちろん本当はそんな約束したくなかったが、未だにずっと仕送りを貰ってる手前、断ることも出来なかった。

「はぁ…」


そう考えてため息を洩らしていた時、ふと聞き慣れた単語が聞こえてきた。


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