桜田課長の秘密
眉一つ動かさずに振り返った課長は、サラサラとメモ帳にペンを走らせる。
「佐田倉の住所です。本日19時、時間厳守でお願いします」
「えっ、今日ですかっ?」
「イヤなら――」
「はい喜んでっ!」
彼の手から、メモ用紙を奪い取る。
「それでは、よろしくお願いします」
眉一つ動かさずにそう言った課長が立ち去り、パタンとドアが閉まったのを見届けた途端。
一気に力が抜けて、しゃがみこんだ。
手の中に残されたメモ用紙。
そこには几帳面な字で、住所と簡単な地図が書かれていた。
会社からも近い23区の一軒家……か。
さすがは売れっ子作家さまさまだ。
このときの私は、これから降りかる厄災について知る由もなく。
ただただ、クビを免れたことに安堵していたのだった。
「佐田倉の住所です。本日19時、時間厳守でお願いします」
「えっ、今日ですかっ?」
「イヤなら――」
「はい喜んでっ!」
彼の手から、メモ用紙を奪い取る。
「それでは、よろしくお願いします」
眉一つ動かさずにそう言った課長が立ち去り、パタンとドアが閉まったのを見届けた途端。
一気に力が抜けて、しゃがみこんだ。
手の中に残されたメモ用紙。
そこには几帳面な字で、住所と簡単な地図が書かれていた。
会社からも近い23区の一軒家……か。
さすがは売れっ子作家さまさまだ。
このときの私は、これから降りかる厄災について知る由もなく。
ただただ、クビを免れたことに安堵していたのだった。