桜田課長の秘密
「さ……桜田課長!?」

女を惑わす切れ長のタレ目は、キョロリと小く縮み、見慣れた光をたたえて私を見ている。

「いや……夢だ。これは悪い夢に違いない」

「独り言ですか? 聞こえてますけど」

ああ……だけど、この毒のある言いまわし。
間違いない、この人は桜田颯介……さくらだ……

「さくらだ……さたくら……あっ!」

どうして気が付かなかったんだろう。
しかも『颯介』の颯には『風』という字が含まれているじゃないか。

「やっと気が付きましたか」

「なんの……冗談ですか」

「冗談は好きではありません」

「〝さくらだ〟と〝さたくら〟なんてふざけてます!」
「君の名前には負けますよ」

うっ……痛いところを。

えもと・ともえ

下から読んでも、えもと・ともえ。
実際、随分トリッキーな命名をしてくれたものだと思う。

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