桜田課長の秘密
けれども、それは一瞬だった。
はっと我に返ったように頭を振った課長は、メガネをかけて、ひとつ咳払いをした。

「話しを戻しましょう。江本さんにとってメリットはふたつ。正社員登用の約束、月に20万の謝礼は僕のポケットマネーですので税金もかかりません」

あらためて提示されると、やっぱり魅力的な条件ではある。

でも――――

「安心してください。体に触れるとは言いましたが、君の処女を奪うつもりはありませんよ」

「……そんなの、この先どうなるか分からないじゃないですか」

いくら冷血漢の課長だとはいえ、男であることには変わりない。

「それは、僕が君のことを抱きたくなるかもしれない、ということですか?」

「はい……」

コクリと頷いた瞬間、『ハッ』と鼻で笑った課長は、メガネのフレームを押し上げながら言う。

「僕はロリコンではないので、君のように貧相な体を見ても何も感じません」

「っ!……貧相じゃなくて、スレンダーなんですっ」

よくも、人が気にしていることを……
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