桜田課長の秘密
「ご心配なく。天地がひっくり返ろうとも、君に欲情することはありませんから」

「気が合いますね、私もです」

「それは好都合です、僕としても妙な気を起こされるのは本意ではありませんから」

ニッコリと笑った課長は、引き出しの中から便箋を取り出して何かを書きつける。

「念のため誓約書を書きましょう。体には触れるが、最後まではしない……っと」

「ちょっ、まだ引き受けるなんて言ってません」

慌てて駆け寄って、便箋を奪い取ろうとした手を掴まれ、

「怖いんですか? 僕の傍にいるのが」

挑むように見つめられて口が滑った。

「いいえ、まったく!」

「なら出来ますよね?」

「ええ、もちろん」

余裕ぶって答えてから、ヤラレタと気が付いた。
けれども心底ホッとしたように微笑まれると『やっぱりやめる』とは言えなくなってしまう。

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